さい清志(齋 清志)

『これからどうなるの?』新型コロナウィルスの新たな国内感染者が1週間で一万人を超えて経路不明な市中感染が大きく広がる結果となっては社会不安が募るばかりです。本町としてのコロナ禍に関する経済対策並びに生活支援対策につきましては、第3弾、4弾として引き続き取り組む中で迅速できめ細やかな対応に努めることと考えているところです。(具体的な対策については後項参照)
 さらに本町に於いても、激甚化・広城化する自然災害が多発する中、水防災に対する意識の改革や、3密を避けるといった『新しい生活様式』への対応が強く求められる極めて難しい状況が生まれています。改めて『生命を守る』という行政の最も基本的な使命について再確認し、誰もが安全安心を実感できる政策を重点的に展開する所存です。
 さて本町が目指すまちの将来像についてですが、昨年度よりスタートした第6次長期総合計画にも謳った通り、『ひと・まち・桜が咲きほこる先進のまち』とさせていただきました。
 地方創生が叫ばれて5年が経過しましたが、残念ながら地方の人口減少は一層鮮明となり、同時に進む少子高齢化に拍車がかかっています。仙南地域では人口が17万人を割り込み、子どもの数も働き手(生産年齢人口)も大きく減少し、将来の賑わいと活力の低下が、特に経済面に暗い影を落としています。
 加えて社会環境や価値感が複雑に変化する時代となって人と人、人と地域、地域と地域もつながりにくいという現実が危惧されています。改めて『社会的包摂』に目を向けて人を孤立させることがないように『認めあい、支えあい、活かしあう』社会の仕組みづくりが強く求められていると感じています。
 そのような状況下にあって、本町の現状については、コロナ禍の真只中ではありますが、随所に本町らしい飛躍の足跡を実感することが出来ていると受け止めています。人口はほぼ前年を維持し、自然減を若い世代が流入する社会増が補う結果となり、便利と魅力がつまった選ばれる先進のまちとなっています。住宅着工件数の安定した伸びや国道4号バイパスへの商業の張り付きもまた、本町の持つ特徴と潜在力が高まっている証と考えています。
 そして、ハード面では給食センターの稼働や老朽化した桜保育所や大河原中学校体育館の建て替え、さらに県とコラボ事業として白石川右岸河川敷整備事業(ウォーキングロード・サイクリングロード・パークゴルフ等)が順調に進行しています。また、小中学生の学力や高齢者の健康意識の高さなどは、県下トップレベルの状況を続けています。現在深刻な課題となっている仙南二次医療圏の体制整備については、中核・刈田病院の医療機能の分化と連携の強化をはじめ本町が中心的に牽引する役割を担っていると受け止めているところです。
 仙南の中心に位置し、行政・交通・商業・医療・教育文化等の拠点であることに加え、様々に有する利便性も存分に発揮しながら、小さな町でも大きな役割を果たすスーパータウンとして、今後も期待に応えてまいる所存です。
 コロナ禍の終息が見通せない現実やいつ発生しても不思議でない自然災害の襲来に備える等、不測の環境変化へも対応を怠らず、『生命を守る』という使命と危機意識を持ち続けなければなりません。
 そして『町政は町民のものである』ことを忘れることなく『役場は誰のためにあって、職員は何の目的で仕事をするのか』の意識を役場全体で共有するとともに、官民一体となったまちづくりに全力投球してまいる決意をしたところです。町政への高い関心が寄せられることを期待してごあいさつとさせていただきます。

令和2年立秋
大河原町長 齋 清志

1.コロナ禍に関わる経済と生活への支援対策(第3・4弾)

※医療人(薬剤師)であり、経済人としての経験を生かす。

1)経済支援

・町内事業者「おおがわら応援券」4割増支援事業
・医療機関等経営支援事業(医・歯・保険薬局に最大30万円)
・外部人材活用経営改善促進事業
・県の休業支援非対象事業者支援事業(減収額に応じ10万~20万円)
・農業経営継続補助事業(減収申請担い手支援)

2)生活支援

・おおがわら応援券(町民生活応援)発行事業(全世帯に1万円の商品券給付)
・出産特別支援金給付事業(4月28日からR3年4月1日に出産する母親へ10万円給付)
・障がい者生活支援事業(障がい者手帳保持者世帯に5千円のクオカード給付)
・妊婦・重度障がい者インフルエンザワクチン摂取補助(全額)
・新しい生活様式支援事業(全世帯ゴミ袋1セット支給)
・ひとり親家庭生活支援給付金支給(児童扶養手当支給者を対象に2万円支給) 他

3)感染拡大防止事業やその他の事業

・GIGAスクール構想支援事業(タブレット端末全児童・生徒配布)
・ICT教育環境整備事業(デジタル教科書・タブレットドリル)
・家庭機器整備補助事業(モバイルWi-Fi整備・家庭の通信環境整備)
・学校施設水道蛇口改修事業(全蛇口レバー式に)
・避難所感染拡大予防環境整備事業
・議会議場感染予防整備事業
・保育所等感染予防備蓄体制確保事業 他

 

2.防災・減災の充実と生活の安全確保

 防災・減災が「人の生命を守る」取り組みであることを自覚しハザードマップや地域防災計画の見直しと自主防災組織への支援と体制強化を進めます。合わせて、防災士や防災介助士等の資格取得を支援します。
 また、コロナ禍状態での水害避難時には、民間企業の協力により緊急避難所や駐車場の確保(協定締結)を推奨してまいります。
 さらに、全町民への交通安全思想の普及を図り対策の万全を期すとともに、ながら見守り隊などによる防犯対策を重点的に展開します。

3.地域コミュニティの維持と新たな自治のしくみづくり

 住民自治・住民ん主導権のまちづくりを大原則として、人と人、人と地域のつながりを大切にします。
まちづくりの原点として「認めあい、支えあい、活かしあう」を今後とも継承し、様々な自治を支える人づくりと仕組みづくりを推進します。
 また、情報の共有につとめ、協働による住民が主役のまちづくりを土台として、全ての政策分野での基本として位置付けてまいります。

4. 地域医療体制の充実と健康づくりの普及

 コロナ禍によりこれからの進渉に懸念がありますが、国・県の示す『地域医療構想』(将来人口の推計を基に団魂の世代が75歳となる2025年に必要となる病床の機能別必要量を予測し、地域での調整会議を通じて病床機能の分化と連携による効率的な医療提供体制を実現する取り組み)に期待が寄せられています。
 今年の1月には、構想に基づく中核的病院の『重点地区指定』が発表され、仙南では財務状況の改善が急務とされる中、中核・刈田の両院が指定を受けました。
 県と東北大学病院が示す考え方としては、中核病院は救急や外科手術などの急性期を、刈田病院は、病床のダウンサイジングを行い、リハビリや透析の回復期を担い、医療機能の分化を図りながら将来の再編・ネットワーク化につなげようとするものです。
 地域医療の抱える課題としては、中核病院での10月以降の分娩中止(休止)による、仙台や岩沼の病院での産科セミオープンシステムへの移行や仙南医療圏での周産期母子医療の環境の変化が揚げられます。昨年末の県知事への要望活動及び東北大学病院長への仙南2市7町首長連名の要望活動も実施されました。人口減少への危機意識や重要な社会問題としての共通した認識のあらわれによるものです。
 本町は、診療所15施設、歯科診療所16施設、薬局16施設が存在する医療環境に恵まれた町です。また、地域包括支援センターが活発に機能し、行政区や老人クラブでの健康教室が早い時期から実施され、介護や認知症等の予防活動も盛んに行われてきました。その結果として住民の健康意識が高く、特に後期高齢者の健康診査の受診率の高さや、要介護認定率の低さなどは県下トップの状況です。
 さらに健康寿命と平均寿命の差が男女とも県下で最も小さく、国民健康保険や介護保険も健全に運営されています。

5.住み慣れた地域で暮らせる総合的福祉の展開

 まちづくりの理念とも言える『認めあい、支えあい、活かしあう』を基に高齢者や障がい者への医療・介護・予防等の一体的な支援を提供する「地域包括ケア体制」を推進するとともに地域に根差した福祉活動の活性化を図ります。
 しかし、コロナ禍の拡大が区長や民生委員の地域活動を困難にする状況が生まれ人と人、人と地域のつながりの分断が懸念されています。本町に於いても孤独死が発生する悲しい現実もあり、新たな見守り対策につながる実践的な取り組みも他に先掛けて実施されたばかりです。(トイレの電球の点滅とスマートホンの連動により離れた場所でも生存の確認が出来るシステム)
 また、障がい者の方々へのコロナ禍のなかでの生活支援(クオカード5千円分の支給)を実施するとともに、心配される障がい者の就業と定着への支援を検討してまいります。極めて困難な課題としては、医療の提供を受ける重度障がい者の居場所が仙南には存在しないことがあげられます。県への働き掛けや、広域的な取り組みが必要と認識しています。

6.安心して産み育てられる子育て環境づくり

 開所を含めた民間保育所への支援により待機児童の解消を図りながら多様な保育需要に応えるべく老朽化した桜保育所の建て替えが進行中です。
 また、18歳までの所得制限の無い医療費全額補助を維持し成長に合わせた支援体制の整備に取り組む等、子育てのブランド化に向けた施策の展開を図っています。
 また、本町の持つ特徴として一人親世帯の増加傾向がみられますので、貧困の実態把握につとめながら具体的な支援策についての検討が急がれると認識しています。

7.桜のプロジェクトと河川敷の活用

 本年6月に念願が叶って観光物産協会の法人化が実現しました。インターネットの活用や実践的な営業活動を通し、自立につながる活動に取り組んでまいります。
 また、一目千本桜を中心としたまちの様々な資源を磨き、信頼・誇り・情報発信の向上に結び付け、総合的なまちづくりのブランド化により誰からも『選ばれるまち』を目指します。
主な取り組みとしては、ア)一目千本桜を活用したシティプロモーション イ)地場産品など「食」を中心とした商付加価値化 ウ)結婚促進・子育て支援・移住定住支援等の実施 エ)白石川右岸河川敷整備等、交流拠点、施設の整備に積極的に取り組みます。
 特に白石川右岸河川敷整備については県が堤外地(川側)を町が堤内地(田んぼ側)をコラボ事業として設計段階から県の特扱に厚い支援を受けています。天端(土手上)のサイクリングロードとウォーキングロードへの舗装を始め堤外地の荒整地に続き、パークゴルフ場(3コース)、ドックラン、桜の木を残した公園化(桜の小路)など具体的な活用が計画されています。堤内地については、新たな桜並木(開花時期の異なる種類)の植栽や拠点施設となる建物の検討やトイレの位置についても順次決定されていくことになります。整備が進めば仙南地域全体の賑わいの拠点として広域連携や交流の要として大いに貢献できるものと期待を寄せているところです。国の「国土強靭化」に関わる予算措置により大幅な本町の負担が軽減化されています。

8.地域産業の活性化と働く場づくり、起業・創業支援

 仙南地域に存在する県の指定商圏は「大河原商圏」が一つ存在するのみです。かつては柴田・角田・白石にも独自に商圏がありましたが全て消滅してしまいました。ショッピングセンターや国道4号バイパス沿いの商業の張り付きにより、本町の商業売上高も順調に成長し、交通の要衝であるここと合わせ仙南全体の賑わいの拠点であることが重要な特徴となっています。
 町土が狭く農業の振興や企業誘致には限界がありますが、食の開発と農商工連携のモデル事業に向けて、新たなアイデアと具体的な実践例が生まれることが求められています。
また、アイリスオーヤマ(株)の工場拡張は、多数の雇用を創出し東北創業地としての復活が強く印象付けられることとなりました。
 農業については、担い手の育成とほ場整備の推進が重要な課題として認識され着手に向けた作業が進められているところです。

9.次世代につなぐ学校教育と多様な学びと生きがいづくり

教育のブランド化を目指し「大河原方式」による確かな基礎を学ぶ教育により、特に小学生は県下トップクラスの学力を維持しています。また、中学生も「おおがわらの学力向上3本の矢」を土台に着実な取り組みにより成果をあげつつある現状です。さらに、夢を育む『志教育』や仙台大学との連携による体力向上への取り組みも推進しています。
 子どもたちを取り巻く家庭環境が厳しい(貧困等)状況に対する支援にもつながるよう町独自の教職員配置を今後とも継続し、合わせて就学援助・育英・奨学金等の学び支援のセーフティーネットの構築にもつとめてまいります。
 本町の教育現場では、早い段階からICTの導入及び活用の推進を図っており、GIGAスクール構想の運用も早期に実現する運びなっています。それと同時にさらなるICT環境整備(デジタル教科書・タブレットドリル)や家庭学習通信機器整備事業として、家庭への通信環境整備も進める予定としています。
 現在まで教育環境整備のハード事業としてはエアコン設置が終了し、各校のトイレの様式化や大河原中学校の体育館建て替え事業が進んでいます。
 そして、生涯学習への取り組みとしては、以前より考えてきた「生涯学習の里構想」の実現に向けて、具体的な検討を始める予定としています。生徒数の減少傾向が明確となった時には、いずれ町内2つの中学校の統合の議論が求められることは必然と受け止めいます。将来的には既存の教育施設を活用して拠点施設を活用し、生涯学習の拠点施設の整備を進めることもできるのではないかと考えています。また、本町には、文化財の保護団体や「佐藤屋プロジェクト」のようなまちづくりにつながる活動をしているボランティアグループも存在しており、町としても継続した支援を行ってまいる所存です。

10.地方創生の推進とSDGs Society5.0 実現に向けた先端技術を活用

まち・ひと・しごと創生法に基づき、人口減少や地方創生への対応として本町でも「大河原町まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定してまもなく5年が経過しますが、その継続策として国は第2地方創生の考え方を昨年12月に閣決定しています。これを受けて本町の第2期総合戦略では、第5次長期総合計画の成果と反省を引き継いだ6次長総の特に政策分野を超えて取り組む人口減少の克服と、地方創生の重点プロジェクト「一目千本桜プロジェクト」の推進を図り、新規に着手する事業及び現行事業の継続・強化を進めているところです。
 今後町が取り組む国の示す地方創の新たな視点の中で「地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくる」という基本目標に着目し、地方に於けるSociety5.0(サイバー空間=仮想空間とフィジカル空間=現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会。)の実現に向けた技術の活用を強力に推進するとともに、継続可能な開発目標 SDGs(「誰一人取り残さない」継続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため、2030年を年限とする17の国際目標)を原動力とした地方創生に取り組むこととしています。
 令和6年までの「第2期大河原町まち・ひと・しごと創生総合戦略」として策定中のものです。